浅葱色の約束。
先日、兵士の1人から渡された手紙。
「淡い色の着物姿で簪をつけた女」、それは間違いなくあいつだろう。
俺が選んだ着物を着てくれていることがこっ恥ずかしいような嬉しいような。
見たかった、とも思っちまう。
「…似合ってんだろうな」
女として生きていることに少なからず安心した。
これからお前は誰かと出会って所帯を持って、子供を生んで母親になる。
そんなごく普通の幸せを手にしてくれれば、それだけで十分だった。
ポトンッ、コロコロコロ───…。
手紙を開けたとき、空のような色をした透明な丸い玉が床に落ちる。
これはあいつがずっと持っていた『ビー玉』とやらだ。
なにかあった日は必ず縁側に座って、空に掲げて覗くように見つめていた。
「…大事なものだったんじゃねえのか」
その玉をコートのポケットにしまう。
もう1度茶を啜って目を通すが。
そこに筆で書かれた文字があまりにも斜めで、歪んでいて、とても下手くそだったから。
「くっ…ははっ。俺じゃなかったら読めねえよ」
数ヵ月ぶりに笑ってしまった。