浅葱色の約束。
終章
浅葱色の約束。
桜の花びらが舞う、そんな町で。
かつて1人で通った2度目の道を通る。
私の記憶の中にあった小さな女の子は少し成長していて。
そんな少女は柔らかく呼ばれた名前に振り返った。
「───…お姉ちゃん!」
「久しぶりたまちゃん!」
「…こいつがたま……なのか…?」
私の隣にいる男を不思議そうに見つめ、そして首を傾げる少女。
父親を知らない娘はこうして大人の男性を見るのは初めてであった。
「近藤さんにどこか似てるよね」
「京に登る前に赤子のこいつしか見てねえからよ。…成長するモンなんだな」
この人が父様───?
少女はそう思うが、どことなく違うような気がする。
それでも、父様のお友達。
それだけは分かっていた。
やがて人の気配に気付いた少女の母親は、そこに立つ着物姿の“女”に度肝を抜かれたように驚き。
そしてまた、夫の親友である男が立っていることに涙を流した。
「ただいま、お父さん。」
お線香を立てて、花を飾る。
手を合わせた隣で腑に落ちない顔の男を、きょとんとした目付きで見つめてみる。
「…なんつうか、あん時ゃ俺はてめえをそういうふうには見てなかったから近藤さんが“父親”ってのに違和感は無かったけどよ、」