浅葱色の約束。




「土方さん、どこか寄る場所があるの…?」



彼がどこに向かっているのか分からないから、とうとう会話を出してみた。

それでも足は止まることなく進んでいく。


もう、こうと決めたらどんどん行っちゃう人なんだから。


袴に比べて着物は歩きづらい。

長年袴で生活していたからか、そんなものに慣れてしまって。

未だ着物では速く歩けない。



「土方さんっ、せめてどこに行くかだけでも教えてくれないと…!」



歩こうにも歩けないよ…。


そんな私に気付くと、彼はクルッとUターンして戻ってくる。

そしてしっかりと手を掴んできた。



「俺の実家」


「………え。」



逃げんなよ───?

悪戯な笑みが目の前にある。



「や、それは、色々…ほら、…なんていうか……色々あったので…」



“息子”だと紹介され、そしてそれはバレており。

そのことは土方さんは知らず、けれどお姉さんはそのまま騙されたふりをして。


そして数年経ったある日、そんな弟がかつて“息子”と言った“少年”を妻にして連れてくるのだ。



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