浅葱色の約束。
そんなおとぎ話のような笑い話がどこにあるだろうか。
これはとても、なんというか……。
「───複雑か?」
この人、いつもこうして子供みたいなことをする。
仕返しっていうのかな、ガキ大将みたいにやられっぱなしではいられない性分で。
ぷいっと顔を逸らす私に、土方さんは再び顔を覗き込んだ。
「あと“土方さん”ってのナシな」
「…と、…としぞ………さん、」
「いい加減慣れろ。てめえも“土方さん”だろうが」
前はあんなに歳三さん歳三さんって言えてたじゃねえか───。
ボンッと真っ赤な顔を隠すように、小さな小さな対抗。
「と、歳三さんだって“てめえてめえ”って───…っ!」
言葉を遮るかのように重なった2つの影。
目の前に優しく瞳を伏せている彼の顔があった。
目を見開く私を包み込むように、優しいものを落とすその人。
「んっ…、」
気付けば引き寄せるようにして、簪の付けられた髪を愛しげに撫でて回った腕。
私も精一杯応えるように、きゅっと瞼を閉じた。
その寸前、ふっと笑う彼の音が微かに聞こえる。
「───…」
名残惜しそうにゆっくりと離れた唇。
「───良くできました。」
彼はペロリと舌を出して悪戯に微笑んだ。
そんな男を前にすると、いつになっても変わらない少女のように照れる妻。
ふふっと幸せそうに笑うものだから。
「俺ぁそろそろこの先に進みてえんだがな」
「……えっ…!?」
その手を引いて、
土方は愛しさを静かに噛み締めた───。