浅葱色の約束。




「時折」というのは施設の名前だ。

苗字が無い子供たちは皆、同じように施設の園長の苗字をもらう。


そうしてこの先、大人になるまで生きるらしいのだけど。

苗字なんかいらない。

名前だって、こんなもの誰がつけたのかすら不明なのだ。


どうして私は生きているの、どうして生まれてきたの。


神様は乗り越えられない試練は与えないと言うけれど、これは試練なんかじゃない。

背中に永遠と背負う大きな罪のようなもの。



「かなちゃん読んでくれるかなぁ?」


「もちろんよ。ちーちゃんがあんなにも気持ちを込めて書いたんだもの」



字が書けるようになったとき、施設の子供たちは両親へ向けてお手紙を書く。

年に1度設けられるそんなイベントは、子供たちもその時だけは親に捨てられたということを忘れていた。



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