浅葱色の約束。
曲がり角から姿を表した少女は泥だらけ、そしてフラフラと足をおぼつかせながら近付いてくる。
僕に続くように土方さんも思わず駆け寄った。
少女はポスンと、僕の胸に倒れ込むように身を預けてくるから。
「朔の奴…、手荒なことはするなって言ったのに」
「どうやらそういうわけでも無いらしいぜ」
「え?」
土方さんはその顔を顎で指図する。
少女は既に静かな寝息に変わっていて、その表情はとても穏やかで満足気。
楽しかった、と言うように優しい顔をしていた。
「よいしょ、っと」
抱っこをする形で立ち上がる僕へ、土方さんは軽く鼻で笑う。
「なにを笑ってるんですか?」
「あのクソガキがここまで育つたぁ驚くモンだと思ってな」
「…言ってる意味がわかりませんね」
子供の扱いには慣れているから。
サラッと頬にかかった髪が少しくすぐったくて顔が緩む。
「軽いなぁ」
やっぱり女の子なんだなぁって、おんぶした時もそう思ったけど。
とりあえずまずは寝かせて、起きたら一番にお風呂に入らせよう。
「総司、」
梓の草履を脱がせ、屯所内へと抱き上げながら進む僕を止めた声。
彼は少しだけ微笑みながら小さな声で言った。
「お前は昔から何も変わってねえよ。だから心配すんな」