浅葱色の約束。




幸せなんか、どこにも無いんだと思う。


私の世界にはきっとない。


そう思うことが何よりも唯一の乗り切り方だった。

期待はしない。
そうすれば裏切りも何もないから。


いつか誰も知らない町に行こう。

早く高校まで出たら、すぐにこの町を飛び出して。

ぜんぶ、全部最初から初められるようなそんな人生を。



「あっ!猫ちゃん!ママ、猫ちゃんがいるよ!」


「こら!ちょっとちーちゃん!走らないの!」



何の気の迷いかはわからない。

普段通らない横断歩道の道に来てしまったのも、歩道橋をスルーしてしまったのも。


その日はいつもと違う感覚などしなかったのに。


施設へ戻って自分の部屋に籠る、そんな日常を繰り返すだけ。

別に退屈でも何でもなかった。そこしか居場所は無いのだから。


それより頬が痛くて痛くて仕方がない。



ブ───────…ッッッ!!!!



あ、やっぱり今日はおかしいみたい。



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