浅葱色の約束。
「何しに来た」
「あなたに会いにきたの…!」
「帰れ。帰り賃なら出す」
「嫌よ…っ、私は帰らない…!」
土方さんに限ってまさかとは思ったけど…。
やっぱり知り合いだったみたいだ。
ちょうど隊士の半分以上は山南 敬介(さんなん けいすけ)と共に奈良へと出ている為、屯所内はいつもより静かだった。
だとしてもそんな場所で映画の1シーンのようなものを繰り広げられてしまっては目立ってしまう。
女は涙を流しながら土方さんの袖を掴んでいて。
「俺とお前はもう関係ねえだろ」
「私ずっと待ってたのよ…!京に行ってるってお姉さんに聞いて…」
「帰れ。あと姉貴には金輪際迷惑かけんじゃねえ」
近藤さんは前に、昔の土方さんは女遊びが激しかったと言っていた。
確かに土方さんは役者さんみたいに綺麗な顔立ちをしてるとは思うけど…。
「どうしてあなたはいつもそんな言い方しか出来ないのよ…!」
「だったらてめえの為にも大人しく帰っとくんだな。お疲れさん」
「なっ!本当に何も変わってないのね……!!」
何せ性格がコレだ。
まさに外道とはこのこと。
そんな人を選んでしまった多恵さんも自業自得ではないのか、と。
そんなことを思ったり思わなかったり…。
気の毒に思えてきて目の前の光景に合掌をして、ペコリとお辞儀をした。