浅葱色の約束。




痛い、だなんて。

そんなこと初めて思った。



「ちーちゃん───!!!!」



今日はとても変な日。

だからきっと体が勝手に動いてしまったらしい。


交差点、赤信号。


飛び出した小さな女の子の目の前には、1匹の野良猫。

猫はひょいひょいと先へ行ってしまって、そんなものを女の子の足はゆったりと追いかける。


ブーーーーっと、クラクションを大きく鳴らしながら迫る大型トラック。


運転手の男の吹かした煙草の煙が最後に見たものだった。



「きゃぁぁぁーーー!!!ちーちゃんが…!!女の子が…!!」



誰かの命を助けてあげられる程、私は出来た人間じゃなかったはずなのに。

いつだって自分のことに精一杯で、けれど自分のことでさえも上手く出来なくて。

誰かの為に何かをしてあげたことなんてない。


愛情も家族も。


全部知らないまま。



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