浅葱色の約束。
「ひどいわ…!ずっと一緒に居てくれるって約束したのに…!」
「あん時ゃ俺も子供だった。悪かったとは思ってる」
土方さんが頭を下げた…。
その姿を初めて見たのは私だけじゃないみたいで、藤堂さんも沖田さんまでもが目を見開いている。
「ま、まぁまぁ…。積る話もあるだろうからゆっくりしていくといい」
「近藤さん、ここは女人禁制ですよ」
「だとしてもこのまま帰すわけにもいかんだろう。これはトシの、…親として男としての責任なのだから」
多恵さん、お化粧崩れちゃってる…。
きっと土方さんに会う為に綺麗にして京までわざわざ来たに違いない。
そうして静まり返る空気は、どうにも私へ向けられた。
「どこか歳三さんに似ているような気がするわ」
「…え…、それはどう考えても気のせいじゃ……」
隣の男はグイッと肘で押してくる。
「余計なこと言いやがったら切腹」の言葉が送られたような気が。
「一目見たとき、昔の若い歳三さんを思い出したもの」
それは変な錯覚に陥っているんだと思う…。
とは言えないからこそ、なんと言ったらいいかわからない。
「お母さんはどんな人?」
「───…」
思わず言葉が出なかった。
本当なら私だって適当に答えればいいはずなのに、その適当すらも分からない。
「僕の…、お母さんは……、」
駄目だ、全然わからない。
優しいとか料理が上手とか。
そういうのを言えばいいだけなのに。
だって「母親」というものを見たことも無いから。
適当にすら言えない。
「あんま質問すんな。こいつは昔の俺に似て口数が多い方じゃねえんだ」
こんなこと、慣れていたのに。
そんな私の背中をその人はポンポンと優しく叩いてくれていたこと、きっと私しか知らない。