浅葱色の約束。
「性格までもあなた似だと損するわ」
「うるせえ。放っとけ」
2人だけの空気感に、すごく大人のものを見てしまったような気持ちだった。
沖田さんは静かに腹を抱えているし、藤堂さんは完全に信じきっている。
近藤さんも私にどうにか耐えてくれ、と言うかの如くな眼差しだ。
「名前を聞いてもいいかしら」
「…梓です。…とき……土方、梓」
「…梓くん。とても良い名前ね」
名前を褒められるのは、この時代に来て2回目。
初めてそう言われたのは近藤さんと出会ったとき。
こんな誰が付けたのかすら不明な名前を、決まっていい名前だと言ってくれる。
それでも可憐に笑う多恵さんを見ると胸が傷んだ。
やっぱり駄目だ、こんなの。
ちゃんと話さなきゃ。
「と、父さん…!」
多恵さんの腕を引いて、土方さんの前に差し出す。
“父さん”なんて初めて言った。
“お父さん”ではなく“父さん”と言ったのは、私がこの人の“息子”だからだ。
そういう設定なら私も最後までやり遂げようと思う。
「ちゃんと、話して。…このまま終わるのは絶対良くない。…後悔するから…」
「ガキはすっこんでろ」
「ぼ、僕の父さんは新撰組の副長だよ…。それがこんなに…女を泣かせるなんて、その名を自ら汚してるようなものだと思うから…」
じっと、その目は私を見つめてくる。
鋭い眼差しに声が震えるけど、それでも目の前の細い肩は揺れているから。
「僕の父さんはそんなに格好悪い男じゃない…ので、それなので…宜しくお願いします…」
ペコリと頭を下げた。
無理矢理にも土方さんの前に多恵さんを差し出す。