浅葱色の約束。




「あんたが歳三の息子かい」


「…は、はい…」


「あんた……」



誰もがゴクリと唾を飲み込む。


多恵さんは騙せても、さすがに身内にはバレるんじゃないか…。

思わず不貞腐れているその男へと助けを求める視線を送るが。



「………」



しらーっと逸らされてしまった。



「…名前は?」


「あずさ…です」


「おいくつ?」


「じゅ、13です…」


「お母さんの名前は?」


「き、君菊……」



尋問だ…。完全にこの人は土方さんのお姉さんだ。

疑っていたわけでは無かったけど、ここにきて確信。


土方さんは確か10人兄弟の末っ子だと言っていて、だからこそ彼にとってこの人は母親のような人。

土方さんが母親に叱られる子供のように見えた。



「ほんっとに、この馬鹿弟は……」



大きなため息に部屋の空気は一気に重さを増した。

それでも女はまじまじ見つめると、力いっぱいに私を抱き寄せる。



「悪かったねぇ…!ひもじい思いさせて…!!困ってることあったらおばちゃんに何でも言いなさいよ!」


「え……く、苦しい……」


「可愛いわぁ!うんうん、こりゃ奥さんが別嬪さんね!歳三も昔っから女の子みたいな顔してたけどあんたはそれ以上だわ!」



明らかに巻き込み事故なわけだけど…。

この人はどうやら、そんなことを気にしているわけでは無さそうだった。


弟を叱りに来た姉でも何でもなく。
ただ単純に甥っ子を見に来た叔母のよう。



< 96 / 464 >

この作品をシェア

pagetop