アテナ・イェーガー〜不穏、のちにキス〜

「昨夜また事件が起きたな……」

挨拶をした後、ネイサンの顔を緊張したようなものに変わる。ロネは「今回被害者が襲われた場所ってネイサンの家の近くだよね？」と声を震わせた。ナタリーも顔を真っ青にする。

「言われてみればそうじゃん！大丈夫なの！？」

ネイサンは「心配すんな。俺は勇者の息子だぞ」とロネとナタリーを元気付けるように笑う。そして、話題を事件から逸らしてくれた。

「今日は剣の実技があるな」

「それができるのネイサンだけでしょ」

「剣って意外と難しいんだよね〜」

三人は事件などなかったかのように歩き出す。しかし、心の奥底では事件について怯えていた。

そんな彼らは知らない。路地裏で深くフードをかぶった女性が「アテナ……」と言いながらアテナの写真にキスを落としていたことを……。その女性の服が血で汚れていたことを……。