アテナ・イェーガー〜不穏、のちにキス〜
「こんな風にキスするのも久々だな」

アテナは幸せそうに微笑む。ロネも「そうだね」と頷いた。そしてまた唇が触れた。

その後は普段と変わらず切り株に座っておやつを食べ、ロネは学校であったことなどを話す。いつもは楽しい話ばかりなのだが、今回は違った。

「最近、街である事件が起きているんだ」

「事件?」

エクレアを食べながらロネは口を開く。エクレアに目を輝かせていたアテナは、首を傾げた。アテナは森の中で暮らしているため、当然事件のことなど知らない。

「深夜、道を歩いている人が背後から鋭い爪や牙で襲われるっていう事件なんだ。誰が事件を起こしているのか調べられているけど、手がかりはゼロなんだ」

「爪や牙……」

ロネが事件について話すと、アテナの表情が強張る。その顔は街の人たちのような恐怖とはまた違っていた。

「アテナ?」

「ロネ、今すぐに街に行きたい」

アテナはそう言い、立ち上がった。
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