アテナ・イェーガー〜不穏、のちにキス〜
「……人間じゃない。人狼だ。私はその人狼から人の殺し方や戦い方を学んだ」

アテナはそう言い、夕焼けに染められた空を見上げる。ロネは「人狼……」と呟いた。確かに人狼なら鋭い牙や爪があり、人を襲うこともできる。

「でも!証拠なんてどこにもない!!」

ロネがそう言うと、アテナは「わかっている。だから、誰が疑われているのか知りたいんだ」と寂しげな顔をして言った。それはまるで、街の人たちの言葉がわかっているようで、ロネの胸が締め付けられる。

その時、パン屋から出て来た婦人たちが話している言葉がロネの耳に入ってくる。婦人たちが話しているのはやはり事件のことだった。

「最近、事件が多いわね〜」

「世界の終わりかしら?」

「あれじゃないかしら?あの最悪の魔女の子どもが世界を滅ぼそうとしているとか……」

街の人の声に、ロネは言葉を失う。何もしていないアテナが疑われているのだ。

「あとね、主人が言っていたの。お祭りの時にメルガそっくりの人物がいたって……」
< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop