17歳、昼下がりの散歩道
列車は速度を徐々に落とし、車両が豊丘駅のホームに入っていく。
書かれている駅名を見たその瞬間から、春の匂いがぐっと近づいたような気がした。
多分、気のせいだろうけれど。
きっと逸る気持ちが抑えきれなくて、ぼんやりとした幻想のようなものを脳が作り出してしまっているだけだ。
それでも、これで桜並木のトンネルがぐっと近づいたことには変わりない。
電車のドアが閉まって、豊丘駅を出る列車。
なんだかそわそわして、居ても立っても居られず、私は席を立って扉の前まで移動した。
まるでせっかちな人になってしまったかのよう。
それか、遠足が楽しみすぎる小学生かな。
どちらにせよ、私の気持ちが抑えきれないがゆえの行動には変わりない。
降車準備を完了させて、私はただ、揺れる列車の扉の前に立ち尽くしていた。