17歳、昼下がりの散歩道
艶のある綺麗な長い黒髪、透けるように白い肌、桜色の唇、細長い手足……そして、彼女を包むのは純白のワンピース。
舞い散る桜は彼女を一層美しく飾り立てる。
そんな彼女の姿を、絶望的に美しいと思ってしまった。
どこかで不安と焦燥をちらつかせる、散りゆく桜。
あわよくば、この瞬間が永遠に続いて欲しかった。
「素敵。気に入った。」
俺が撮影した写真を確認して、彼女は笑う。
しかし、彼女の次の一言が、俺の不安と焦燥を一層駆り立てることになる。
「じゃあ、後はよろしくね。」
嫌な予感しかしなかった。
なぜだろう。
永遠に続いて欲しいと思っていた絶望的に美しいこの時間に、終止符が打たれるとわかってしまったのだ。
その瞬間、彼女の体が大きく傾く。
「詩織……!」
初めて彼女の名前を呼んだ俺のその声は、彼女に届いたのだろうか。
思わず伸ばした自分の腕は彼女の体を支えたのに、彼女の体にもう力はなかった。