17歳、昼下がりの散歩道




少しの静寂が訪れる。



俺の説明を聞いた電話の向こうの女性は少し黙って、




『……あなた、お名前は?』




そう、俺の予期していなかった言葉を投げかけてきた。




「……平津…空、です。」




今まで淡々と言葉を吐いていたはずの口が、急にバグみたいに動きが悪くなる。




『空くん、詩織が迷惑かけてごめんなさいね。』




「いえ、そんな……。」




出てくる言葉はその程度で、さっきまでの俺とはまるで別人のように思えて仕方ない。




『詩織のバッグの外ポケットにラミネートされたカードが入っていると思うの。見つけられそう?』




言われて、一度スマホを耳から離し、彼女の傍らに落ちていたバッグに手を伸ばす。

女性の言うカードはすぐに見つかった。




”四島詩織(しじま しおり)”の彼女の名前が文字になって並んでいるのに加えて、彼女の持病、かかりつけ病院の名前と住所、電話番号、緊急連絡先として両親の電話番号が書かれ、左下と右下には折り紙で作られた花を飾った、可愛い見た目のカード。




再度、彼女のスマホを手に取り、「ありました。」と、はっきりとした口調で電話の向こうの女性に告げた。




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