17歳、昼下がりの散歩道
………静かな時間が病室に流れる。
静寂を破ったのは、病室のドアが開いた音だった。
「、詩織……。」
現れた女性は顔面蒼白で、ベッドに横たわる彼女のもとへ駆け寄る。
俺が彼女の右手を握っていたので、女性はベッドの左側から彼女の左手を握った。
彼女の手は、驚くくらいに冷たい。
病室にいた医師が、この瞬間を待っていたかのように口を開いたのがわかった。
「お母様、残念ですが……。」
医師の方を見ていないのに、なぜか医師が時計を確認する動作をしたのがわかってしまう。
それと同時に、視界が朧げに歪んだ。
「16時32分。ご臨終です。」
一粒、頬を伝った涙は、一粒だけでは止めることができず、次々と溢れてくる。
それは、ベッドの反対側にいる女性も同じだった。
「いつか、どこかで……こうなるかもしれない覚悟はしていたけれど、。」
涙声で彼女は言う。
「あまりにも早すぎるわ……。」
そうして、泣き崩れるのだった。