3分遅れのアンダンテ
恋の速度はアンダンテ
「奏音ちゃん、これ3番テーブルに運んでくれる?」
「はい!」
高校生になってから初めて始めたアルバイト。
高校と自宅のちょうど中間にあるファミレスで働いている。
初めてのアルバイトはわからないことばかりで失敗の連続だった。
そんな右も左もわからない私の指導係として1から優しく教えてくれたのが、同じ高校の祈先輩。
祈先輩のことが好き。
私の恋の始まりは、一目惚れだった。
「ありがとう。ちょっと落ち着いてきたし、休憩入っていいよ」
「わかりました、ありがとうございます」
ふたつ上の祈先輩は、アルバイトの中ではもうベテランの域でみんなから慕われている。
とても頼りになる先輩だ。
慣れない仕事に失敗してしまうこともやっぱり多くて、その度に祈先輩が助けてくれた。
「やっぱりかっこいいなぁ…」
休憩室に入るといつも漏れてしまう心の声。
"好き"の気持ちは溢れてしまいそうなくらい大きくなっていた。
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