〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

「今のなんの注射ですか?」
「あの動きは手話?」
「一緒に食べないのですか?」

 パク・ユンホは、そんなメンバー達を愉快そうに見ながら質問に答えた。
「私は糖尿病と高血圧を(わずら)っていてね。彼女は専属看護師なんだよ。彼女は口がきけない。耳は聞こえるがね。だから彼女は手話か筆談で話す」

「ああ、だから……大人しい方だと思っていました」
 リーダーのゼノが大きく(うなず)きながら言う。

 パク・ユンホは続ける。
「看護師としては一流だが、カメラを覚えたいと言うのでアシスタントもやって(もら)っている。最近は、ここの大道具の仕事にも興味があるらしいなぁ。今日もスタジオを見に行っていたよ」

「あ、大道具に弟子入りしたいらしいですよ」
 キム・ミンジュは料理から目を上げずに、さらりと言った。

 パク・ユンホは大笑いをする。笑いながら代表に「トラブルを出入りさせてもいいかね?」と聞いた。

 「もちろん!すぐに特別社員証をお送りします」

 代表が二つ返事で引き受けたので、静かに話しを聞いていたセスは慌て出した。

「そ、そんな簡単に!大道具はプールに……」
(トラブルを突き落とした……)

「セス、どうしたの?」
 ノエルが困惑するメンバーを代表して聞いた。
 しかし、セスは何と言って良いのか分からなかった。
 そんなセスに気付いたパク・ユンホは、いつもの様に頬に手を当て、優しく言う。
「トラブルが望んだのだから大丈夫だよ。トラブルはトラブルを対処出来る」

「しかし……」
 セスが言い掛けた時、ジョンが無邪気に口を挟んだ。

「トラブルは、どうしてトラブルって呼ばれているの?」

 キム・ミンジュ始め、アシスタント達が凍り付く。

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