〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

「トラブルは気が狂っているんだよ!」

 楽しそうにセスに話し掛ける。
「気狂いに正論や常識は通用しない。だろ? 好きにさせて、自分で道を見つけさせるんだ。いじめられようが、傷つけられようが、本人が大道具に弟子入りしたいのなら、いいじゃないか!」

 セスは戸惑いながら代表に聞いた。
「それで、怪我をしたりさせたりしたら会社の責任になりませんか?」
「それは困るなー。彼女は美人だし、大道具は全員ゴツい男だからなー。万が一って事もなー」

 パクが笑いながら言う。
「君達が守りたまえ。スーパースターのお気に入りなら、簡単に手は出せないだろ?トラブルは君達が気に入っているようだし」

 キム・ミンジュが不思議そうに言う。
「そういえば、そうですね。確かに出たがらないトラブルが、この現場には素直についてきますね」

 代表は思い出した様に提案をした。
「メンバーの医療チームを作るのは、どうだろうか? 前から現場に医療従事者を置きたいと考えていたのですよ。メンバー達のスポーツトレーナーと看護師のチームで、会社の健診も手伝って(もら)えればイ・ヘギョンさんも助かりますし」

 その提案に、パク・ユンホは首を振って反対をした。

「それでは、大道具の仕事が出来ないだろう?それに、私はトラブルを手放す気はないのだよ」

 キム・ミンジュが代表に助け舟を出した。
「トラブルは優秀だから、見ただけで体調を把握(はあく)してくれますよ。いつも左足を上にして組んでいるのに、今日は右足を上にしている、どうしたんですか? なんて事、しょっちゅうですもん」

「うーん、では、基本的にパク先生との契約期間中は1日1回はメンバーも()て……あ、言うの忘れてたけど年末、台湾でコンサートだから。で、パク先生と契約期間中は特別社員証で出入り自由にして、大道具スタッフ見習いだから、うちからの給料はなし! と」

 代表は満足気に手を叩く。

「代表、何だか大事な情報が入ってましたけど?」

 青ざめたゼノが、代表の顔を見る。

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