〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅
ある日、1人が怪我をしているようだと、言ってきた。もちろん筆談で。
彼女の字は、彼女の顔と同じくらい美しい。
いつも、足場の鉄骨を3本運ぶ人が1本つづしか運んでいないとスタッフを指差す。
そんな時もあるだろうと、本人に聞くと、前日に自転車で転び左肘を打撲していた。
大したことないと本人は言うが、トラブルは黒のリュックから湿布を取り出し貼り、慣れた手つきでテーピングを施した。
「うわっ、すげ〜楽になった!ありがとう」
スタッフの言葉に、トラブルのいつもの無表情な顔が少し和らいだ気がした。
誰かに似ていると思ったが、分からない。
彼女は昼にパク先生とメンバー達の控え室に行き、戻ってからの休憩時間は1人で過ごしていた。
倉庫のスミに座って、何かを食べている時もあれば、じっと舞台セットを眺めている時もある。駐車場のドラム缶に座り、空を見上げていたり、バイクで出掛ける時もあるようだ。
とにかく神出鬼没で、足音をさせずに後ろに立っていたりするので、心底驚く。
トラブルにフォローして貰ってばかりいる新人の、トラブルを見る目つきが、気になる……。