〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

 メンバー達は事あるごとにメイク室を(のぞ)きに来た。

 トラブルは、昼食前にパク・ユンホにインスリンを打つ為に現れるが、自分達のことは、一瞥(いちべつ)しただけで、すぐペコッと頭を下げて消える。

 1度トラブルが部屋を出た瞬間、ノエルがむせ込んで咳をした。すると、部屋のドアが素早く開き、トラブルがノエルを、じっーと見た。

 固まるノエル。

 ジュースでむせただけとわかると、トラブルは無言で出て行った。

「怖いんですけど」

 ノエルの言葉に笑うメンバー達。

「あれで、健康管理してるって言えるのかなぁ」

 誰ともなく、トラブルの話しになる。

「パク先生は以前はすぐトラブルを呼べって言ってたけど、今はキムさんを呼ぶよね」
「キムさんはパク先生の無理難題に胃が痛いって言ってた」
「トラブルがそれだけパク先生のワガママ……じゃなくて、問題を解決して来たって事ですよね」

「言う事を聞かないと精神病院に戻されちゃうから必死なんじゃん?」

 ジョンのこの一言で、3人はハッとセスを見る。
 セスは苦笑いをした。

「気を使わなくていい。トラブルは、大道具とうまくやってるみたいだ。パク先生はトラブルの邪魔をしない為に呼ばないんだろう」

「何だよー、セス、トラブルの事気にしてんじゃん」

 メンバー達は口々に冷やかして見せた。

「連絡先とか知ってたりして?」

「もしかして、会ってたりして?」

「美人だもんねー」

「どこかで、会った気がするのですが……」

「僕も見かけた事があるような気がして、思い出せないんだよ」

 5人は、うーんと考えてみるが、体育館での出会い以前の接点は思い浮かばない。

 セスがどんなに否定しても、セスが気にしている女性ということで、メンバー達は盛り上がった。

 常に人目にさらされている彼等にとって、秘めた恋は歌詞の中でしか経験がない。

 しかも相手は謎だらけのトラブルである。

 いつもは、離れた場所で仕事をしている彼女が近くのメイク室にいるのだから、移動の度に(のぞ)いていくのは自然な流れといえる。

 毎日、何回も順番に(のぞ)いていくメンバー達。

 時間があれば手伝いを始めそうな勢いだが、何せ忙しい。
 マネージャーは、1人いない!となると、工事中のメイク室の入り口からひっぺはがしに行かなくては、ならなくなっていた。

  ある日、テオは、ある事に気が付いた。

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