〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅
トラブルは、階段でメイク室まで上がる。
(よかった……誰もいない)
トラブルは掃除を始め、ふと、気が付いた。
(あのカッターナイフは……確かこの辺りに投げ捨てたはず)
しかし見当たらない。
仕方なく手早く掃除を済ませ、keep outのテープを拾いドアを閉める。
ゴンドラの動作テストを始める。
ゴンドラと言っても、折りたたみ式の大きな箱で、舞台の真ん中から2・3人乗って、1階席のお客さんの頭の上を通り、2階席まで真っ直ぐ上がり、また、舞台へ真っ直ぐ降りてくる単純な物だ。
今回のコンサート会場はそんなに広くないので、この動きで充分と判断された。
1番広いスタジオにこの装置を組み立てる。
実際の高さと距離はまるで違うが、まずは動かしてみる。
「ちょっと、早いな」
ウィンチの速さを調節して、1人乗ってみる。
4本のワイヤーで吊られいるので、安定はしているが、停止前の減速が足りず、停止した後、箱が大きく揺さぶられた。
「うわぁ! やばいっすよ、これ!」
とてもじゃないがメンバーを乗せられる代物ではない。
「下りは重さで加速しますね」
「舞台に激突しそうっすよ」
調整と試行錯誤が続く。