〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅
第10話 代表の思い
一方、目撃者となった5人は眠れない夜を過ごした。
誰かに説明をして欲しかった。どう考えて、どう対処すれば良いのか、まるで分からない。ただ、恐ろしかった。
翌朝、ゼノはマネージャーに電話をした。マネージャーは、今から会社で代表と話すと答えた。ゼノはすがる様にマネージャーに伝える。
「話し合いの結果を教えて下さい。下の3人が……特に下の3人がショックを受けています」
誰ともなくリビングに集まる。
セスとノエルが朝食を作り、皆、無言でそれを食べた。
せっかくのオフ日にも関わらず、誰も外出しない。
皿を洗い終わったセスが呟やく様に言った。
「トラブルは訴えないと思う」
「え、セス、どうして?」
テオはセスを見る。
「公になれば、騒ぎになるだろ」
ゼノはセスの言葉を聞いて、頷いた。
「そうですね。当然、目撃証言をしなくてはならなくなりますし、私達の名前も出ますしね」
ノエルは下を向いた。
「コンサートは中止だね……」
「そんな!僕達の為に口を閉じるって事⁈ そんなのおかしいよ! 悪いのは、あの男じゃん! トラブルは被害者だよ!」
テオは興奮して叫ぶ様に立ち上がる。
セスは「違う」と首を振る。
「そうじゃなくて、騒ぎになれば自分の過去が明るみになるだろ」
「恋人が殺された事件……」
テオの顔が凍り付く。