〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅
トラブルはメモを見せる。
『私の得意技。寝かしつけ』
「寝かしつけ⁈ 赤ん坊か!」
セスが驚いていると、トラブルは、次テオと、ジェスチャーで呼ぶ。
テオを机にうつ伏せにさせ、やはり頭にタオルを掛けて肩甲骨を揉む。テオは、なかなか寝ないが、しばらくして寝息が聞こえてきた。
次と、トラブルはセスに合図を送る。
「俺はいい」
トラブルは問答無用でセスの顔にタオルを掛けると、手を揉んだ。
手の平から手首、肘にかかった頃には、もうセスもぐっすりだ。
マネージャーとゼノが入って来た。
何だ⁉︎ と、驚くマネージャー。
皆、死んだ様に眠っている。
「あー、いいですね。私も寝たいですよ」
ゼノが皆んなを見回して苦笑いをする。
『トレーナーは?』
トラブルはマネージャーにメモで聞いた。
「連絡が付きません。本人は医務室に行く程のことはないと言うし……」
マネージャーは困り顔だ。
トラブルはゼノの手を引いて、部屋の隅の簡易ベッドに横にさせる。
メモでマネージャーに『腰椎ベルトは2本あるか?』と聞く。
「はい、あります」
マネージャーからベルトを受け取り、ゼノの股関節を寄せる様に強めに巻く。もう1本を両膝が付く様に巻いた。
「あー。これ、気持ちいいです」
トラブルはゼノの顔にタオルを掛け、頭の後ろから首を揉む。多分に漏れず、すぐに入眠した。
マネージャーは、信じられないとトラブルを見る。
(それだけ疲れていると言うことですよ……)
90分は寝かせたいと、マネージャーに伝える。
「今日は、夜に夕飯を食べながらの雑誌の取材と深夜のラジオ出演だけなので可能です。振り付けの先生に伝えて来ます」
『1時間後に昼食を届けるように』と、トラブル。
「はいっ」と、マネージャーは走る。
トラブルは5人の寝息を聞きながら、静かに本を読んで起床時間を待った。