〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅
すべてのスケジュールが終わってホテルに入ると、午前3時になろうとしていた。
皆、口もきけない。
マネージャーからルームキーを受け取り、無言でそれぞれの部屋へ入って行く。
テオの部屋はシングルベッド2つに、テーブル・椅子3脚のこじんまりとした部屋だ。
壁のテレビが大型すぎて部屋に合っていない。
テオは半分寝ながら荷物を置く。自分のではない荷物が置いてある気がするが、今はどうでもいい。
かろうじて靴を脱ぎ捨て、ベッドに倒れ込む。
そのまま気を失うように寝た。
朝、物音で目覚めた。
(今、何時? 8時? そろそろ起きないと朝食を食べ損ねる。でも、ダメ、眠すぎる。もう1回寝よ……)
目を瞑る直前、見慣れない荷物が視界に入った。
(ん? 黒いリュック、誰のだろ。あのカバン僕のじゃない。椅子にかかっている服、ブーツ…… 。どこかで見た事がある…… )
バスルームのドアが開き、誰かが出てきた。
「えっ!」
目が会う。上半身裸でバスタオルを首にかけただけのトラブルだった。