〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅
姿勢の良い少し上を向いた、横向きのシルエットが浮かんでいた。
美しい、流れるような曲線。完璧なスタイルのシルエット。彫刻のようだが、ただ残念なのは腰に工具が巻きついている。
パク・ユンホがシャッターを押す。
「素晴らしいだろ?」
画像をメンバー達に見せながら満足気に笑う。
「あれ、誰だ?あんなダンサーいたか?」と、監督は首を傾げた。
「あれ、トラブルだよ!」
「え⁈」
「うそ!」
「そうだ、トラブルだ」
メンバー達もざわつく。
シルエットのトラブルは膝を曲げ、大きく手を振ってジャンプをし、貼り紙を剥ぎ取った。
「おー」と、監督は手を叩く。
「高い!」
「すごいよ、トラブル」
「バスケの時みたいだ!」
しかし、シルエットのトラブルは立ち去らない。まだ、上を見ている。剥がし残しがあるようだ。
軽くジャンプして、両手でどこかにぶら下がった。
息をのみ、美しいシルエットを見つめる一同。
ゆっくり腕が曲がり、体が上がっていく。
「懸垂してる……」
片手を離して上へ伸ばす。しかし、届かない。片手のまま、さらに体を持ち上げる。
パッと飛び、着地した。
影は大きく薄くなり、トラブルは消えた。
「片手懸垂したよ!」
「嘘だろ」
「信じられない!」
「ジョン、今の出来ますか?」
「本当にトラブル?」
「男だったんじゃない?」
「え?ニューハーフ?」
メンバー達が驚きながら頭を抱えて飛び出す言葉に、パク・ユンホは満足気に大笑いしながら、その表情をカメラに収める。
リハーサルは終わり、メイク・衣装も完璧だ。
いざ、オープニングへ。
コンサートも終盤に差し掛かった頃、パク・ユンホが体調不良を訴えた。
トラブルが呼ばれる。
低血糖症状が出ていた。
トラブルは、パクにブドウ糖を摂取させホテルに帰る事にした。
「あとを頼む」
パク・ユンホはキムに託し、トラブルとホテルに帰って行った。