〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅
小休憩に入る。
スタッフ達は用意された飲み物を思い思いに取り、レストランに入って談笑を始める。
トラブルはパク・ユンホのカメラバッグを持ち、後ろから付いてレストランに入った。
セスは、その様子でトラブルもパク・ユンホのアシスタントの1人なのだなと思った。
トラブルはパク・ユンホとセスのテーブルから一礼して離れ、水を取りに行こうとするが、その通路手前に、あの大道具スタッフ達が陣取っていた。
トラブルは一瞬足を止め、右に迂回して水を取りに行く。
離れた場所で椅子に腰掛けると、ゼノ役のスタッフが近づいて来た。
「パク先生と座らないんですか?」
嫌みっぽく言い、トラブルの顔を覗き込んで前髪に触れようとする。
トラブルは、サッと立ち上がる。
「先生のお膝に座りに行くのかなぁ?」
ゼノ役の一言に周囲からドッと笑いが起こる。
トラブルは何も言わずに、誰とも目を合わさず、ただその場から離れて、セス達のテーブルの横を通り過ぎ中庭に出て行った。
その様子を見ていたセスは、困惑してパク・ユンホに聞く。
「あの方……トラブルと皆さんは仲間では無いのですか? なぜ、ご自身のアシスタントがひどい扱いを受けているのに、何も言わないのですか?」
パク・ユンホは少し考えて、そして、さらりと言った。
「トラブルには『トラブル』と呼ばれる理由があるのだよ。自分の身に起きたトラブルは、自分で解決するだろうさ。あと、彼女は私のアシスタント兼専属看護師だ」
パク・ユンホは、いつもの様に腕を組み、片手を頬に当てて、薄笑いを浮かべる。
休憩終了。
ジョンのバク転シーンのリハーサルが始まる。