〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

 小休憩に入る。

 スタッフ達は用意された飲み物を思い思いに取り、レストランに入って談笑を始める。

 トラブルはパク・ユンホのカメラバッグを持ち、後ろから付いてレストランに入った。

 セスは、その様子でトラブルもパク・ユンホのアシスタントの1人なのだなと思った。

 トラブルはパク・ユンホとセスのテーブルから一礼して離れ、水を取りに行こうとするが、その通路手前に、あの大道具スタッフ達が陣取っていた。

 トラブルは一瞬足を止め、右に迂回して水を取りに行く。

 離れた場所で椅子に腰掛けると、ゼノ役のスタッフが近づいて来た。

「パク先生と座らないんですか?」

 嫌みっぽく言い、トラブルの顔を(のぞ)き込んで前髪に触れようとする。

 トラブルは、サッと立ち上がる。

「先生のお膝に座りに行くのかなぁ?」
 ゼノ役の一言に周囲からドッと笑いが起こる。

 トラブルは何も言わずに、誰とも目を合わさず、ただその場から離れて、セス達のテーブルの横を通り過ぎ中庭に出て行った。

 その様子を見ていたセスは、困惑してパク・ユンホに聞く。
「あの方……トラブルと皆さんは仲間では無いのですか? なぜ、ご自身のアシスタントがひどい扱いを受けているのに、何も言わないのですか?」

 パク・ユンホは少し考えて、そして、さらりと言った。
「トラブルには『トラブル』と呼ばれる理由があるのだよ。自分の身に起きたトラブルは、自分で解決するだろうさ。あと、彼女は私のアシスタント兼専属看護師だ」
 
 パク・ユンホは、いつもの様に腕を組み、片手を頬に当てて、薄笑いを浮かべる。

 

 休憩終了。
 ジョンのバク転シーンのリハーサルが始まる。

< 6 / 64 >

この作品をシェア

pagetop