もう誰かを愛せはしない
「…ライハに合コンなんて似合わないね」

「うるせぇ!数合わせだよ」



あ…
この感じ、昔に戻ったみたい。



素直になれなくて嫌味を言う私に礼羽が言い返すやり取り。




「ふふっ。ライハは変わらないなぁ」

「メイサほどじゃねぇよ」



礼羽の隣りにいると、出会った頃から変わらない匂いが鼻をくすぐる。




「あれ〜?神崎くんじゃない。こうして会うの久しぶり〜」

「…あんた誰?」



礼羽に気付いて嬉しそうに駆け寄る美佳に、礼羽は無表情のまま呟いた。


それもあの頃と変わらない。



「もー。神崎くんは本当にメイサ以外眼中にないんだから」



プーと膨れる美佳を見て笑っていると、翔介がやってきた。


フッと景色が変わったと思ったら、翔介の腕の中にいた。



「あんた、この前会ったメイサの元彼だろ。…悪いけど、メイサはもう俺のだから」



威嚇している犬みたいに礼羽を睨みつける翔介。


すると礼羽はフッと微笑んだ。



「大丈夫。人の女に手ぇ出す趣味はねぇから」



礼羽はそう言うと、私と目を合わす事なく医学部の友達らしき人達の元へ行ってしまった。




もう私は

礼羽の“彼女”でも“友達”でもないのだと悟った。





「ねぇ翔介。一度恋人になった人同士って、別れたら何になるの?」



経験が豊富そうな翔介に何となく聞いてみた。




「友達に戻る人もいるけど、ただの元カノになる人の方が多いかな」

「…そうだよね」



一度はキスしたり抱き合ったりした人が友達になるはずがない。


友達よりも離れた存在になっちゃうよね。




翔介から香る匂いを感じながら、私は居酒屋の中へ入った。
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