もう誰かを愛せはしない
席に着くと主催者らしき人が適当に飲み物やおつまみを頼み、それが来るまでの間、自己紹介タイムが始まった。



私と美佳、亮太と翔介以外みんな医学部で、そのせいか医学部同士で盛り上がっている。


何か疎外感…。




私はお酒が飲めない為、ほろ酔いの翔介にベタベタされているだけ。


本当につまらない。




ただ時折、礼羽を見つめている自分がいた。




「医学部の女性陣、女度高めだよね。あんなのが医者になったら患者に色目ばっか使ってそう」



隣りに座っている美佳が耳元で呟く。


美佳が嫌味を言うなんて珍しいな。



「あんなに胸元開けちゃって。誰も見ないっつーの!睫毛もバサバサでラクダみたいだし。
お前らなんか砂漠でモハメッドでも乗せてろって感じだよね!」



モハメッド…?誰!?



…あぁ

ベッドで男を乗せるんじゃなくて、砂漠で中東の人を乗せろってことか。



上手い!
美佳に座布団一枚〜


…じゃなくて




「美佳!お酒飲んだでしょ!?」



美佳を見ると、美佳は泡の盛った黄色い飲み物を飲んでいた。


あぁ、やっぱり…。




美佳はジョッキに入ったビールを飲んでいた。



「美佳が人を批判するなんておかしいと思った。美佳、あんたお酒飲めないでしょ?……って亮太!何で美佳を見てないのよ!?」



亮太を睨むと、亮太は既に出来上がっていて翔介と騒いでいる。


彼氏があれじゃ美佳がこうなるワケだ。


翔介も亮太も役に立たないな。




「…気持ち悪い…。吐く」

「え゛っ!?美佳、少し我慢して!トイレ行こう」



真っ青な顔をして口元を押さえる美佳を連れてトイレへと駆け込んだ。



私が見ていなかった間にどれだけ飲んだのか、美佳は苦しそうにいっぱい吐いている。
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