もう誰かを愛せはしない
「…人の女に手を出す趣味なんてなかったし、そういう行為って最低だと思ってたのにな」



礼羽の声が上から降ってきたと思ったら、私は礼羽とキスをしていた。



今までしたことがないような、甘くて苦いキス。


こんなキスもあるのかと思えるくらい切ない味がする。




時間が止まったのかと思うくらい礼羽のキスは長かった。




本当に

時間が止まったらいいのに…


そして二度と動かなければいい。






私が止まる事を望んだ時間は、遠くで私の名前を叫ぶ翔介の声で終わった。



「…ショウスケが探してるから…私、戻らないと」

「…ごめん」



私は礼羽から体を離すと、カチッと音を立てるリングを触った。




「…ライハはユウキさんを想っててあげて。ユウキさんもそれを望んでるよ」

「俺はユウキの事はもう…」

「ユウキさんと共に生きているのがライハだよ。ライハはライハのままでいて…」



リングから手を離すと私は翔介の元に走った。





違うの

本当はそんな事思ってない。



ユウキさんなんて今すぐにでも礼羽の中から消えて欲しい。

あのリングなんて今すぐ投げ捨てて欲しい。



そう思ってるんだよ。




でも

翔介の声が
ユウキさんのリングが

私の声を奥にしまってしまう。





泣きたいよ
苦しいよ


礼羽が好きすぎて悲しいよ…。
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