もう誰かを愛せはしない
「ショウスケ、私の住所から1番の最寄り駅に行って。私、そこまで行くから」


「わかった。駅ならさっき通ってきたし、すぐ着くよ」


「急がなくていいから気をつけて運転してね?私も10分くらいで着くからまた電話する」



携帯をバッグにしまうと、靴を履いて家から出た。



休日の早朝だからか、人が全くいない。




「ライハとスーパーの安売りに行った時みたいだなぁ…」



そんな事を思いながら駅までの道を歩いていると、ロータリーに派手な赤いスポーツカーが一台停まっていた。



ブォンブォンとうるさい重低音を響かせるマフラー。

改造したのかかなり低い車体。

イカついタイヤのホイール。




…まさか、あれが翔介の車じゃないよね?


私、あんなヤンキーみたいな車乗りたくないよ。




私が呆然とそのスポーツカーを眺めていると、その車から出てきて欲しくなかった人が降りてきた。



「おはよー、メイサ」



あー…

やっぱり翔介の車だったのね〜




「…ねぇ、何この車」

「俺の愛車♪カッコいいっしょ」

「…いや?すっごくカッコ悪い」



だってこの車、朝が似合わない。


ホストとかヤンキーが乗ってそうな車なんだもん…。




「車の良さが分からないなんて、女の子はこれだからダメだな」



女だからなのか?




「まっ、こんな所で世間話してても時間が勿体無いから、とにかく乗って」



翔介に促されて車体の低い車に乗り込んだ。



…フワフワしてて座り心地が良さそうに見えた座席は、位置が低くく座り心地が悪い。


座ってるというより寝そべってるみたいな体勢になってるけど…。




「乗った?じゃあ俺んち行くか」



翔介はキィを差し込むとエンジンを掛けた。



車体が地面に付きそうなくらい低いからか、振動が凄い。


…酔いそう。




そんな最悪なドライブをしながら翔介のマンションへと到着した。
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