もう誰かを愛せはしない
暫くすると自転車は、私のバイト先のファミレスに到着した。



「え?ファミレス?誕生日なのにこんな所でいいの?」

「あぁ。俺は安いものをガッツリ食べる主義なんだよ」

「どんな主義よ」



まぁ安いにこしたことはないけど。


バイト代だって入ったばかりといえ、時給が時給だから大した額じゃないし。




そんな事を思っていると礼羽が手を差し伸べてくれた。



わっ…
何だかカップルみたい。


礼羽の手、大きい…。




嬉しさと恥ずかしさを感じて、少し躊躇しながらもその手を握った。



そのまま店の中に入り席につく。




「好きなの頼んでいいよ。お姉さんが奢ってあげるから」

「お姉さん?メイサはガキだよ」

「うるさい!いちいちツッコまないの!!」



さっきまでのムードはどこいった!?




フンッと荒く息を吐き、メニューをテーブルの上に広げると、礼羽は体を乗り出して私が見てるメニュー表を眺める。




「どれがオススメなの?店員さん」



かっ…顔が近いよ、礼羽




礼羽の分のメニュー表もあるんだから、それ見なさいよね!


…と言ってやりたかったけど、仕方なくメニューを指差した。




「フルーツタルト?じゃあそれでいいや。あとはハンバーグセットとドリアと…それから」

「そんなに食べるの!?」

「メイサの為に腹空かしといたんだよ」



礼羽はそう言うと呼び鈴を押してメニューを注文した。




「メイサはケーキだけでいいのか?飯は?」

「うん。だってまだ夕方だし」



何となく携帯を取り出すと、ぼんやりと画面を見つめる。
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