もう誰かを愛せはしない
「多分、忙しいだけだと思うけど…。ほら、事故とか病気とか変な事が起きてたら、誰かしらが知ってるはずでしょ?」



…うん。

確かにそうだよね。


でも友達にさえ連絡先を教えないって、どういう事?





そんな事を思っていると突然携帯が鳴った。


ディスプレイには翔介の名前。




翔介?

別れてから一度も連絡なんかなかったのに…。




「…もしもし?」

「メイサ。俺…翔介だけど、今大丈夫?」



久しぶりに聞く翔介の声は、あの頃と変わらず優しかった。




「うん、大丈夫。久しぶりだね」

「そうだね。別れて以来かな?」




翔介を

翔介の匂いを


礼羽だと想っていた自分。




翔介にどれだけ失礼な事をしていたのか、今ならわかるよ。




「あのさ、余計なお世話かもしれないんだけど一応メイサに伝えておこうと思って」

「うん、何?」



隣りで会話を聞いている美佳は、誰からの電話なのかと気になって携帯に耳を寄せてきた。




「神崎礼羽っていう新人の研修医の名前がね、親父の病院の付属病院の名簿に載っててさ。…メイサの元彼なんじゃないかって思って」


「え?ライハ!?付属病院って何処の付属病院!?」


「神崎礼羽の研修先は、俺達の高校の市内にある付属病院だよ。
……メイサ、俺がメイサにしてやれるのはここまでだ。後はメイサがどうするかだよ」



翔介、もしかして…。




「…ショウスケ、悪者でいるんじゃなかったの?」

「あはは、まぁね。…でも、一度は好きになった子に幸せになって欲しいと思うのが男だよ」




翔介…

やっぱり悪役は向いてなかったね。



あなたは本当に優し過ぎるよ。
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