もう誰かを愛せはしない

2・遺言

翌日。

約束した通り礼羽のおじいちゃんの家に向かった。



最後にここに来た時は、何も考えられなくて無我夢中に来たから、ちゃんと景色を見てなかったけど


ここの景色は、礼羽と来た時と何も変わっていない。





田舎ならではの匂いを吸い込み、山の緑と田んぼの緑を眺めながら畦道を歩いていると


茅葺き屋根の家の前におじいちゃんが立っていた。




「いらっしゃい、メイサさん。こんな遠くまで来させてすまなかったね。本来なら頼みごとをするワシが行かなきゃならないのに」


「いえ、またおじいちゃんに会えて嬉しいです」



おじいちゃんは顔を皺々にして微笑むと、私を家の中に入れてくれた。




「あの…頼みごとって何でしょうか?」



縁側に座る私にお茶と和菓子を持ってきてくれたおじいちゃんは、私の隣りに座った。




「頼みごとの前に、1つ聞いてもいいかい?」

「はい、何ですか?」

「メイサさんは礼羽の事をまだ好きでいてくれてるのかな?」



おじいちゃんはズズッとお茶を啜ると、風の走る田んぼを見つめていた。



その横顔からは何の感情も読み取れない。




「…まだ…好きじゃないです。……私はライハが“ずっと”好きです」



礼羽に恋をしてから

この想いは途切れたことがない。




きっとこれからも

途切れることはない。





「そうか、よかった…。礼羽とメイサさんはな、ワシとばぁさんみたいなんだ」

「おじいちゃんとおばあ様みたい…ですか?」



私に似てるって言っていたおばあ様のことかな?
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