もう誰かを愛せはしない
泣いている私達の病室にいる医師は、おじいちゃんのことを話し始めた。




おじいちゃんの死因は心臓発作だということ。


発見者の話によると、家の前の桜の木の下で倒れていたということ。




そして…

小さい頃の礼羽の写真を握り締めていたこと。






“礼羽、1人で自転車乗れるようになったんだな”


“礼羽、一緒にスイカ食べるか”


“礼羽、おかえり”





礼羽にとっておじいちゃんは父親みたいな存在だと、前に礼羽は言っていた。




3回しか会ったことのない私でさえ、おじいちゃんの死がこんなに悲しいんだもの…。


礼羽の悲しみは計り知れないよね。






ふと、おじいちゃんの顔を見つめるとあることに気がついた。



「…ライハ、おじいちゃんの顔見て」

「嫌だ!笑ってないじぃちゃんなんか見たくねぇ!!」



首を振って俯く礼羽の頬を掴んで目線を合わさせた。



礼羽の目は礼羽とは思えないくらい腫れていて、目の前にいる礼羽が知らない人に見える。




「…ちゃんと見て。おじいちゃんは笑ってるよ」



ベッドに眠るおじいちゃんは微笑んでいる。



死んだ人の表情なのかと思う程、穏やかな顔をしていた。





「ライハにユウキさんの手紙を渡せて満足したんだね。今まで黙ってて辛かったんだよ、きっと。
…だから疲れて眠ってるだけよ」


「…っ!!!!」




礼羽は強く私を抱きしめると、泣いた。
< 143 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop