もう誰かを愛せはしない
“メイサさん
ワシの役目は終わった。
これでいつ死んでも悔いはない。
まぁ、今死んでしまったら
心残りは
礼羽とメイサさんの結婚式に
出席出来ないことだな”
おじいちゃんは礼羽への伝言を私に告げた後、小さくそう呟いていた。
「何で俺は…大切な人の死に際に立ち会えないんだよ。じぃちゃんも、ユウキの時も…」
ユウキさんの最期もペアリングを買いに行って、立ち会えなかった礼羽。
でもね
きっとそれは
みんな最後に覚えておくのは
礼羽の笑った顔がいいからなんじゃないかな?
最後に見るのが
礼羽の泣き顔じゃなくて
八重歯を見せた笑顔であって欲しいんだよ。
私だってもし、今死んでしまうのならそうがいい。
礼羽の笑顔を
焼き付けて逝きたいよ。
「ライハ、笑って?」
私の首元に顔をうずめて涙を流していた礼羽はゆっくり顔をあげる。
「…笑って、ライハ。私、笑ったライハが1番好き」
礼羽は無表情のまま私を見つめると、ぎこちなく口角を上げ八重歯を見せた。
「…ふふっ。何、その顔。ライハのブサイク」
「うるせぇな!メイサが笑えっつったんだろ」
私と礼羽は頬を引っ張り合いながら笑った。