もう誰かを愛せはしない
暫くすると礼羽は立ち止まり、ガチャッとドアか何かを開ける音が聞こえた。



「…よし。目隠し取っていいぞ」



アイマスクを外すと、いきなり暗闇から解放された瞳が光を嫌がった。





「うーん…。目が痛い…」



ギュッと目を瞑ってゆっくり目を開くと、見覚えのある場所が映った。





「…え?何で…」

「まだ空き部屋だったんだよ。だからまた借りた」



私の目に映ったのは

礼羽と同棲していたあのアパート。




古びた外観も
狭い部屋も

ドアを開けて玄関に立っている礼羽も


あの頃と変わっていない。





「…ふっ。何で泣くんだよ」

「だって…私、ライハとまたここで暮らしたいってずっと思ってたんだもん!」



流れ落ちてくる涙を拭いながら礼羽を見つめると



礼羽の首元には

2つのリングがぶら下がったネックレスが掛かっていた。




「…ライハ?何でまた、このネックレスしてるの?しかもまた指輪が2つ」



ユウキさんへのリングとはデザインの違うリング。



無くなったと思っていた隔たりが再びあることに、少しへこんだ。





「…“結婚したい人”にあげるから」

「え?」

「それよりメイサ、お前出て行ったっきりだろ?家に入る時はちゃんとアレを言ってから入れよ」



話を変える礼羽。


しかもアレって何?




私が首を傾げると、礼羽は苦笑いしながら呟いた。
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