もう誰かを愛せはしない
こんな些細な事で礼羽は私をいとも簡単に幸せにしてしまう。


それと同じように私を傷つけるのも簡単だ。




本当はね、今すぐにも『好き』って言いたいんだよ。


でも
傷つくのが恐いから言えない。




少し礼羽と距離を作った方がいいのかな?って、たまに思うけど



一緒にいると辛いけど
一緒にいないと寂しい。



だから礼羽から離れられない。


だから前には進めない…




当たり前のように一緒にいてくれるけど、礼羽は私の隣りにいる時…


何を想っているの?





「メイサっ!!!!」



ホームで電車を待っていると

ホームと駅前を隔てている有刺鉄線が張られたフェンス越しに名前を叫ばれた。




フェンスに少し体を乗り出して、ブンブンと手を振る礼羽。




あぁ…

やっぱり礼羽は簡単に私の心をかき乱す。


礼羽だけなんだよ?


私を喜ばせたり、悲しませたり出来るのは。





「…礼羽。好きだよ」



この距離なら聞こえないと思って呟いた言葉。




私達は電車が到着するまで、手を振り合っていた。
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