もう誰かを愛せはしない
レストランが静かになった頃。


バイトの時間が終わり礼羽が座っていた席に向かうと、礼羽の姿はなかった。




「あれ?いない」



礼羽に電話を掛けるが、応答はない。




え?

まさか帰ったりしてないよね、あいつ。


自分から誘っておいて。




中々繋がらない携帯を握り締めながら店から出ると、礼羽が走って戻ってきた。




「バイト終わった?」

「終わったよ。どこ行ってたの?」



少しふてくされながら礼羽を見ると、礼羽は私の目の前に袋を掲げた。




「お土産」

「…スーパーボール?」



礼羽がぶら下げているのはキラキラと光るスーパーボールが入った袋。




「そっ。祭り21時までしかやってないって聞いたから取ってきたんだよ」

「ありがとう♪…でも何でスーパーボールなの?子どもじゃあるまいし」



スーパーボールを眺めながらそう呟くと、礼羽はフッと笑った。




「高校1年の頃、クラスの奴ら大勢で祭り行っただろ。…覚えてる?」

「あぁ!懐かしいね。高1のクラス、異様に仲良かったよね」

「その時メイサ、宝石みたーい♪ってハシャぎながら俺に取れってねだったんだよ」

「えーっ。そうだっけ?」

「そうだよ」




礼羽は私の頭にポンと手を置くとニカッと歯を見せて笑った。
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