もう誰かを愛せはしない
「…ライハ、暗がりなのに1人で大丈夫なのかな」



電気つけて寝るから大丈夫か。




ひと通り部屋を片付け、溜まっている洗濯物を洗濯機に詰め込んで回すと、掃除機を取り出した。



すると、棚の上に合鍵が置いてある事に気がついた。




「…っ…。何これ…」



合鍵の下には『おかえり』と書かれたメモが置いてあった。



もしかして礼羽が玄関の鍵を掛けてなかったのは

私がいつでも帰ってこれるように開けておいてくれたのかな?




どうして…?

どうして礼羽はこんなに優しいの?




ねぇ礼羽。
私、どうすればいい?



ユウキさんの存在は気になるけど礼羽のそばにいたいよ。


でもこんな中途半端な気持ちでいたら、礼羽を傷付けるだけだよね。




零れ落ちてくる涙を拭うと、キッチンに向かって同棲してた頃のように質素なご飯を作り始めた。




家には残り少ないケチャップとパスタの麺しかない。



これで何を作れと?




「…ナポリタンが作れるかな」



茹でたパスタをフライパンに移し、ケチャップと共に炒めた。


残量の少ないケチャップは全体に混ざらなく、味の薄いナポリタンが出来上がった。



まぁ…
食べれればいいよね。



火を止めフライパンに蓋をする。




部屋にはケチャップの匂いと、ほのかに礼羽の香水の匂い…。



「メール…はしたらダメだよね。距離置いてるんだから」



そう思い、部屋にあった紙に『温めて食べてね』と走り書きをするとアパートから出た。
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