もう誰かを愛せはしない
知り合いでも何でもない男に嘘を付かれたってどうでもいい。


興味ない。





そう思って他の客の接客をしていると、牛乳紅茶男達のテーブル番号の呼び鈴が鳴る。



他の従業員が行くだろうとほっておくと、名前を叫ばれた。




「ミルクの女神様〜!注文お願いしま〜す」



そう叫びながら何度も呼び鈴を鳴らす男達。




お客様なんだけど…

正直ウザい!!





「お客様、呼び鈴を何度も押すのはご遠慮下さい。…御注文どうぞ」



きっと今の私を漫画にしたら、頭にイラつきマークが付いてるだろう。





「あのっ!俺、川野翔介って言うんですけど、ミルクティーのお礼がてら今度デートして下さい!!」

「お礼なんて結構です。御注文は?」



笑顔で断ると、男はガーンと口を開いた。





「お願いします!俺とデートして下さい!!」

「遠慮します。御注文は?」

「下心なんかありませんから!お願いします!!」



男は立ち上がると、私の目をジッと見つめた。




彼の瞳は、怯えているのに何処か強気な犬のような瞳をしている。



純粋そうな
真剣そうな

彼の心を表しているような瞳。



その瞳に負けた。




「…じゃあデートなんて大袈裟なものじゃなく、今日バイト終わったら何処かに連れて行って下さい。それならいいですよ」



後日また会うのが嫌だという意味で言ったのに、男は尻尾を振って喜ぶ犬のように目を輝かせた。




「じゃあじゃあバイト終わるまでここで待ってますね」

「はい。21時になったら着替えてきますから」




男に頭を下げて、接客に向かうと男が友達たちに「お前らは帰れよな!」と言っている声が聞こえた。




今日1日、牛乳紅茶男に振り回されてる気がするけど

気のせいかな…
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