もう誰かを愛せはしない

 

「メイサ、今日はみそ汁に具が入ってんだな」


「タイムサービスでお豆腐と油揚げが安かったんだよ」



テーブルには白いご飯と具だくさんのお味噌汁、たまご焼きにレタスだけのサラダ。


その向こうに礼羽の笑顔。




「ふふ…」

「何笑ってんだ?具だくさんのみそ汁がそんなに嬉しいのか?」



礼羽はみそ汁を啜りながら、私の事を見た。



具だくさんのみそ汁に喜んでるのは礼羽でしょ。





「違うよ。こんな質素なご飯でもライハが笑ってくれるなら美味しいなって思ってね」



礼羽はすごいよね。


普通なら不自由だらけのこの生活を、この上ない幸せに変えてくれるもの。




幸せは、高価なものや贅沢なものじゃない。


愛する人と一緒にいられる事が何よりの幸せなんだよね。




幸せなんて探さなくてもこんなに近くにあるものなんだと

礼羽は教えてくれた。





「メイサ、これやるよ」



礼羽はネックレスに掛かっていたリングを1つ外すと、私に差し出した。




「…あれ?これって確か…」


「本当に好きになった人にあげようと思って買った指輪だよ。だからメイサにやる」



綺麗に輝くシルバーリング。


窓から差し込む日差しに反射したリングが、私の胸を射した。
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