もう誰かを愛せはしない

4・錯覚

明るい金髪
連なったピアス
高い背丈


礼羽と同じ、香水の匂い。





「メイサさん、一緒に帰ろ」



牛乳紅茶男こと、川野翔介の前で泣いてから何故か一気に仲良くなった。




「『さん』付けなくていいって言ってるでしょ。ショウスケの方が年上なんだから」

「そうなんだけど、慣れなくて」



翔介は私より1つ年上で、私と同じ学部を専攻している。



よくよく見れば、礼羽に負けず劣らず結構な男前。



その上優しい翔介なんだけど、私は…




「今日、メイサさ…メイサの好きな所寄って帰ろっか」



私はあの日、翔介に礼羽の話をした。





「俺に話して下さい。あなたの話なら何でも聞きます」


「…私、ライハという彼氏がいたんです。でも、彼にとって私は亡くなった元カノの代わりでしかなかった。…それが悔しくて悲しくて仕方ないのに、彼を恨めも憎めもしないこの気持ちが苦しくて…」




礼羽を


恨んで恨んで、憎めたら…


嫌いになれたらどんなに楽なことか。




でも私は礼羽に嫌悪を抱けない。




礼羽が私にしてくれたことが、ユウキさんにしていたことだって分かってるのに


私はきっとどこかで礼羽を信じてるんだ。


だから嫌いになれない。




「無理に嫌いになる必要なんかないですよ。それだけ彼の事が好きだった大切な証なんだから」



翔介は優しく言葉を続けた。




「苦しいのは今だけ。いつか素敵な思い出に変わりますよ」



そうなのかな。


礼羽との日々はいつか思い出に変わっちゃうのかな?

もう、過去にしかならないの?




「…寂しいなら俺があなたのそばにいます。今はまだ恋人になれなくてもいい。…でもいつか、彼を忘れられたら俺と…」

「…メイサ。だよ」

「え?」

「あなたじゃなくて、メイサ。そう呼んで下さい」



少し微笑んでそう言うと、翔介は嬉しそうにコクコクと頷いた。





新しい恋をしたいと想った瞬間に現れた男。


きっとこれは何かの縁だよね。
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