もう誰かを愛せはしない
5・バイバイ
あれから
礼羽の姿を見掛けていない。
でもそれでいいと思っていた。
今、礼羽に会っても
私には何も出来ないから…。
「ねぇメイサ。最近ずっと一緒にいるけど、川野先輩と付き合ってるの?」
いつものように美佳とキャンパスで話していた。
「まだ付き合ってないよ。…ってか何で美佳、ショウスケの名字知ってるの?」
私、美佳に翔介のフルネーム教えたっけ?
「だって彼、私達と同じ高校の先輩だよ?クラスの女子が『川野先輩カッコいい〜』って騒いでたじゃん。…知らなかった?」
え?同じ高校!?
あいつ、一言もそんな事言ってなかったけど…。
学年違うし、翔介も知らなかったのかな。
「まぁ無理もないか。メイサはいつも神崎くんばっかり見てたもんね」
「…うん。そうだね」
礼羽と出会ってからは、ずっと礼羽といた。
何で仲良くなったのかは覚えていないけど、礼羽といる私が当たり前だと思っていた。
随分前のことに思えるけど…。
「噂をすれば川野先輩よ」
美佳に言われ顔をあげると、翔介が嬉しそうに駆けてきた。
やっぱり…犬っぽい。