もう誰かを愛せはしない
男の人と手を繋ぐなんて初めてじゃないのに、何でこんなに恥ずかしいんだろう…。



「…ふふっ。ショウスケ、顔がタコみたい」

「うるさいな!メイサもリンゴみたいだよ」



きっと、翔介がこれでもかってくらい照れるから私も恥ずかしいんだ。



でも、この付き合いたての初々しいカップルって雰囲気を嬉しく思ってる私がいる。




礼羽とは、友達だった時間が長かったからこんなに照れ合ったりしなかったもんなぁ…。




「ねぇメイサ。もう俺に話してない元彼の話はない?」



駅のホームに着き、鞄の中の定期を探していると、翔介が少し真面目な顔で呟く。




う〜ん…。

多分全部話した気がするけど…


何かあるかな?




「…あ。まだひとつだけある。でも大した事じゃないよ」

「何?話して」



本当に大した事じゃないんだけどなぁ。

まぁ、話すくらいいいか。



「ライハね、ネックレスしてたんだ。地味に高いらしいシルバーリングが2つ繋がれたネックレス」


「ネックレス?それがどうしたの?」


「ライハはそれをね、肌身離さず身につけてて…何でリング2つなの?って聞いたら“本当に好きになった人に1つあげるから”って言ってたんだ。
…でもそのリング、私にはくれなかった」



きっと

“本当に好きになった人にあげる”


という理由が本当だったなら、礼羽は私にくれたと思う。



でもあの指輪の理由は…。




「…それで全部?」



翔介は俯く私の顔を覗くようにして顔色を窺ってくる。
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