もう誰かを愛せはしない
「うん。全部だと思う」

「そっか。じゃあそろそろいいかな」



ん?何がいいの?


疑問に思っていると、翔介に力強く抱き寄せられた。




え?えっ!?何!?




「…俺、メイサが元彼の話を全部話してくれたらちゃんと告ろうと思ってたんだ」



全部話したらって…

それまで待っててくれるつもりでいたの?




「元彼の事が忘れられないのなら俺が必ず忘れさせてあげるから。…だから俺と付き合って?」




抱きしめてくれる翔介の腕が震えている事と

通り過ぎる人達の痛い程の視線が恥ずかしい。




ここは一端、離れないと…。




そう思って翔介の体を押すと、翔介は離さまいと腕に力を込めた。




「ショウスケっ…!ここ駅だよ?恥ずかしい…」

「やだ。…メイサが『いいよ』って頷いてくれるまで離さない」



何よ、それ。

じゃあ断ったら離してくれないってこと?



ふふっ。変なの。




「…ショウスケは四六時中、私の事だけ考えてくれる?」

「うん。今だってメイサの事しか考えてないよ。…メイサとあんな事やそんな事したいな〜…とかね」



あんな事やそんな事って…。

この男は何て事を…。




でもこんな翔介だから、私を幸せにしてくれるよね。




うん。
今度こそ幸せな恋をするんだ。


だから…



バイバイ、礼羽。





「…いいよ。ショウスケ」




礼羽の香水の匂いを感じながら、私は翔介に頷いた。
< 97 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop