もう誰かを愛せはしない
6・同じ匂い
「メイサ、ショウスケじゃなくて『翔ちゃん♪』って呼んで」
めでたく(?)翔介と恋人という関係になったんだけど…
「あっ、でも『ダーリン』っていうのもいいなぁ」
「…悪いけど、翔ちゃんともダーリンとも絶対呼ばないからね」
付き合ってから翔介はずっとこんな感じ。
甘ったれというか
必要以上にイチャイチャしたがるというか…
礼羽とまるっきり正反対。
今だって講義中なのに、隣りでピーチクパーチクうるさい!
てか、何で2年生の翔介が1年の講義にいるのよ。
「いいじゃん!憧れてたんだから。ダーリンって呼んでよ、ハニー」
「気持ち悪いな!ハニーって呼ぶ度、一回ビンタだからね!!それに私はショウスケ以外呼びません」
静かな講義室に響く私の怒声。
教授に睨まれた私は翔介を突き飛ばすと、真っ赤になって縮こまった。
隣りに座っている美佳と亮太は笑いを堪えながら震えている。
「メイサと川野先輩、付き合い立てでラブラブしたいのはわかるけど、みんないるのを忘れないでね」
「美佳だって亮太とイチャついてんじゃん!」
講義室の机が段になっていて死角になってるのをいい事に、亮太と美佳はコッソリ手を繋ぎながら講義を受けている。
「誰にもバレてねぇんだからいいんだよ。メイサ達もココを使え」
亮太はコンコンと頭を叩くと笑った。
「…ムッツリカップル」
「何だと!?このオープンバカップル!!」
翔介と美佳達カップルとずっと騒いでいたら、痺れをきかせた教授に怒鳴られ、私達4人は退場させられてしまった。
「メイサのせいだからな!」
「何でよ!亮太の声がデカいからでしょ!!」
もう!
単位落としたらどうするのよ。
留年なんて嫌だよ、私。
「まぁまぁメイサも亮太くんも。退場させられたくらいで怒らない、怒らない」
「あんたのせいだ!!!!」
私と亮太を宥める翔介に、亮太と声を揃えて怒鳴った。